人事労務の小ネタ

ボランティア支援

 企業によるボランティア支援は、「ボランティア団体/NPO(Non-Profit Organization:非営利団体)支援」および「従業員のボランティア活動支援」に大別することができます。
 
 前者は、企業が特定の団体に経済的な援助(運営費用の寄付、設備備品の提供など)や人的な支援(組織運営のアドバイス、従業員の派遣など)を行うやり方があります。支援対象団体へは、1)幅広く少しずつ支援する場合と、2)対象を絞り込んで手厚く支援する場合がありますが、1)は社会や従業員の多様な価値観に応えられる一方、個別の団体に対して十分な支援ができないことになり、2)は逆となります。

 1)と2)のいずれを選択するかは、自社のCSR活動におけるボランティア支援の位置づけによります。たとえば、環境問題対策がCSR上の課題となっている場合は、環境関係団体に対する支援を強化することになるでしょうし、地域社会に受け入れられることが課題であれば、地域団体に絞り込むことになります( 2)のケース)。従業員をステークホルダーとして重視するならば、1)を選択するとよいでしょう。

 人的援助を行う場合は、従業員の自主性を重んじ、社内公募や自己申告制度によって人選を行うとよいと思われます。

 後者の従業員のボランティア活動支援については、従業員がボランティア活動を行いやすい環境整備を行うことになります。

 従業員はボランティア活動を行うことで、地域社会のさまざまな人との出会い、多様な社会的課題への理解、多様な価値観の許容、自社の商品やサービスを利用している人々を購買者以外の側面からも理解、業務でのポジション以外の役割の経験といった様々な経験をすることができます。そうすることで、社会的課題への感度の向上、主体性・自主性の向上、魅力ある人格形成などにつながるので、人材の成長として企業側にもメリットがあります。
 
 このようなメリットを享受するためにも、ボランティア活動支援の環境整備は必要です。

 まず、時間の支援として、ボランティア休暇制度、ボランティア休職制度があります。
 
 ボランティア休暇制度とは、従業員が平日のボランティア活動に参加しやすくなるように、有給休暇のほかに特別休暇を与える制度です。企業によって、有給としているところもありますが、有給でなくても問題はありません。また、有給とするのにも限界があるでしょうから、一般的には一年につき五日程度とすることが多いようです。したがって、本格的にボランティアを行う授業員のニーズを満たすためには、次のボランティア休職制度を用意する必要があります。

 ボランティア休職制度とは、海外青年協力隊など短期の休暇では参加が不可能なボランティアを、従業員としての身分を捨てることなく行うことができるものです。

 休職期間中は無給とするのが一般的ですが、社歌保険料負担やボランティア支援金といった形で金銭的な援助を行うこともあります。また、休職期間は1~2年程度とするのが標準的な取り扱いでしょう。

 情報提供・研修・表彰などで支援するのも有効な支援方法です。

 ボランティア体験支援制度をもうけ、授業員がボランティア活動に目を向け、行動を起こすきっかけを提供するのもよいでしょう。

 情報提供については、会社がボランティア団体と協力していく必要もあるでしょう。

 留意すべきは、CSRを果たすために、社員の自発性を無視して社会貢献を強要するのは、そもそも労働CSR上好ましくないということです。社員の自発性を促進できるような制度を作っていくことが重要です。

 また、支援の方法としては金銭的なものもあります。従業員社会活動援助金制度、マッチング・ギフトなどがあります。

 従業員社会活動援助金制度とは、ボランティア団体支援との複合系の仕組みであり、従業員やその家族が参加している団体に対して、資金や物品の寄付をするものです。企業の支援スタンスが上述の1)の場合は、この仕組みを検討するとよいでしょう。

 マッチング・ギフトとは、従業員が特定の団体等に寄付したときに企業がその給付金に上乗せして寄付金を拠出する仕組みです。授業員がボランティア活動などの社会貢献に興味があっても、時間の制約等によりなかなか直接参加できない場合、この仕組みにより容易に社会貢献ができるようになります。

 たとえば、従業員が5000円を寄付した場合、企業も5000円拠出して、あわせて1万円を寄付することになります。上乗せする金額については、従業員の寄付額を同額とするケースが多いようですが、従業員の倍額、従業員の半額としても問題はありません。また、通常、従業員一人あたりの年間マッチング拠出額には、通常、従業員一人あたりの年間マッチング拠出額には上限を、設けることになります。

 企業はマッチング・ギフトを通してCSRを果たすことになるにとどまらず、従業員の企業に対する忠誠心を高め、モラールを向上させるという効果も期待できます。従業員にとっては、自分が貢献したいと考える団体に対して、自分が勤めている会社も貢献することから、自社を誇りに思うとともに、従業員個人の意志が尊重されているという実感を持つことができるのです。

 日本ではまだ導入事例は少ないものの、関心の高い企業が多く、導入ニーズは高いものと推測されます。

 そのほかのボランティア支援の取り組みとしては、1%クラブというものもあります。

 1%クラブとは、もともとは米国において発達してきた社会貢献の一形態で、日本でも日本経団連が経常利益の1%以上を目安に社会貢献活動のために拠出する1%クラブを1990年に設立しています。企業はこのクラブの法人会員となることで社会貢献を行うことができますが、一企業として独自の取り組みをすることも可能です。

 ある米国企業では、利益のみならず、株式および従業員の労働時間についてもそれぞれ1%を社会貢献のために使うとしており、経営方針として具体的な数値目標を用いた社会貢献を実行しています。地域社会への貢献など、金銭的な援助でなく直接的な人的貢献が必要なことも少なからずあり、社会貢献における従業員の参画を重視するのであれば、労働時間の拠出を義務づけることにより、自発性は薄れるものの従業員の社会貢献に対する強い意識付けを行うことが可能となるでしょう。


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2014-08-08 (金) 08:00:17
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