社会保険料を節約する方法

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社会保険料とは

社会保険料とは、企業が負担する、健康保険・厚生年金保険・介護保険・こども手当等拠出金(旧児童手当拠出金)・雇用保険・労災保険のことを指すと、このページでは定義します。

所得税では、社会保険料の定義がされていますが、社会保険に加入している従業員が支払った、被保険者負担分を指します。

企業では、その被保険者負担分と、企業が負担する分を合わせて、社会保険料・労働保険料として、国に納付しています。
国に納付するのは、法律に規定された義務です。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)は、個人事業の一部を除き、加入が義務付けられています。社長一人でも、役員報酬が支払われていれば、加入が義務になっています。
労働保険(労災保険・雇用保険)は、従業員を一人でも雇っていれば、加入手続きを取らなくてはいけません。

これを記憶しておいてください。
☆かなりアバウトに記述しています。例外除外より原則・基本の考えを元に、分かりやすく言い換えしています。

社会保険料の仕組み

社会保険料の元になるのが、賃金・給与です。
社会保険料では、従業員に支払われる、労働の提供に対する金銭が、社会保険料を決める基礎になります。

具体的には、次のとおりです。

  • 月例給与
    • 基本給:基本給、能力給、職務給、業績給、能率給など
    • 諸手当:役職手当、住宅手当、通勤手当、営業手当、調整手当など
    • 割増賃金:時間外手当、深夜手当、休日出勤手当など
  • 賞与

通勤手当は、所得税法では原則非課税となっていますが、社会保険の各法律では、報酬・賃金として社会保険料の元にしています。
賞与は、労働保険では以前から月例給与と同じ扱いでしたし、社会保険では、平成15年4月の総報酬制の導入以後は、月例給与と同じ料率で、社会保険料の元になっています。

実際の保険料算出方法は、労働保険の場合は、月例給与・賞与支払毎に、保険料(雇用保険のみ)を計算します。社会保険は、4月5月6月に支払われた月例給与の平均を毎月の保険料とし、賞与は支払い毎に、計算します。
支払い毎の場合は、金額に保険料率を掛けて、算出します。

社会保険料を節約したい

それは、「報酬・賃金の額を減らす」ことです。
ただし、常識としてご理解いただけるでしょうが、「減らす・下げる」はハードルが高いのです。

加入義務のある従業員の公的保険加入手続きを取らないのは、法令違反になりますので、絶対にやってはいけないことです。

結論として申し上げます。
「社会保険料を都合良く、簡単に、節約・削減などできません。」

では、どうしますか?

  1. 健康保険と厚生年金保険の社会保険料については、年に1度、4月5月6月に支払われる給与をもとに計算されます。基本給や役職手当、通勤手当などは変動が少なく固定的なものです。変動のある賃金・給与は、割増賃金・時間外手当・休日手当などの割増賃金やいわゆる基準外賃金だけです。
    この3ヶ月の給与に時間外手当・休日手当などが少なければ、結果として保険料は安くなります。ただし、将来支給される年金や私傷病で休業した場合の傷病手当金、労災の休業補償(給付基礎日額)なども少なくなりますので注意して下さい。それ以上に、この3か月の所定外賃金が都合良く(恣意的に)低額になるケースは少ないかと思います。固定的なものは、この3か月間は変更させないのも手です。
     
    雇用保険や労災保険の労働保険料は、1年間の賃金総額をもとに保険料を計算しますので、年収が同じならば月収には影響されません。
     
  2. 選択制の確定拠出年金を導入します。通常の確定拠出年金であれば、会社が対象者全員の掛け金を出します。ですが、「選択制」は、従業員が「給与の一部を減額して掛け金を捻出する」か、「選択制の確定拠出年金に加入せずに、その分を給与・賞与などとしてもらう」かを選びます。「給与の一部を減額して掛け金を捻出する」方を選んだ場合は、社会保険料が安くなります。詳しくは、選択制の確定拠出年金について解説しているページをグーグル検索してください。
    選択制は、相当な規模の企業様であれば、福利厚生の選択肢として良いと思います。
    (導入には、厚生労働省の承認が必要です。制度運営のお金は。会社の負担です。選択制の退職金制度もありますが、現時点ではおすすめしません。)
     
  3. 外回りの多い営業スタッフがいる場合は、営業手当などの手当の一部を、日額出張の旅費・日当として支給します。それらは、妥当な金額であれば、所得税法上非課税で、社会保険・労働保険とも報酬・賃金に組み込みません(対象外)。当然、労働条件の不利益変更になりますので、慎重な対応が必要です。他には、建設関係に従事している職種の方への適用も、面白いかも。営業手当・現場手当が、いわゆる「固定(定額)時間外手当」の場合は、そう単純に見直しできません。
    出張旅費規程で、規定します。
     
  4. 賃金・給与の一部を、「退職金」として積み立てます。退職金は、退職所得として所得税法上も有利に扱われますし、社会保険・労働保険でも報酬・賃金に入れません。
    万が一、従業員がお金を必要とするときは、前借り・借入金制度などで渡すことによって、若干の安心感もあります。
    退職金規程で規定することはもちろん、前借り・借入金制度の場合の相殺についても、規定します。協定類の締結も必要です。
     
    いずれにしろ、簡単に「社会保険料が安くなる」訳ではありません。このページの最後にも書いていますが、まずは企業業績をアップさせること、人材の確保をしておくこと、働きやすい職場づくりにチカラを注ぐことが本来の企業経営です。
     
    次の項目からは、従業員の報酬・賃金に関する問題ではありません。
     
  5. 派遣社員を活用する。派遣会社のPRではありませんが、社会保険料負担が無く、消費税課税なので有利です。まあ、期限の問題がありますので、臨時的・一時的な人手不足であれば派遣社員の活用も視野に入れましょう。
    (間接的には、社会保険料を支払っているという指摘もいただきますが。)
     
  6. 外注・アウトソーシングや業務委託を利用する。労働に関する課題が一挙に解決すると言われていますが、元の従業員を外注先・業務委託先にする場合はトラブルになるケースも少なくありません。事前に顧問の税理士先生と調整してください。最近は、消費税課税の問題で税務署の調査で「給与支払いが相当」と指摘されることもあります。
    (現在雇用している従業員を外注扱いなどに変更するのは、トラブルや退職につながりますので、ご注意ください。)

ちなみに、書籍などで記述されている「住宅手当の支給から現物支給へ」(借り上げ社宅化)は手間・管理面と税務面を考慮すると、実施するのは結構難しいでしょう。対象となる従業員も少ないでしょうから…。

他には、「福利厚生の現物給付」があります。
例えば、家族手当の代わりに現物給付。ただし、設定が難しいこと、現時点の給与の額・諸手当の削減などの労働条件の大幅な変更が発生します。「これから」ならば、何とかできるでしょう。福利厚生のカフェテリアプランも導入を検討できます。

なお、課税所得を減らす方法は、労働条件の不利益変更に該当します。また、住宅ローンを借りる場合、年収が低くなりますので借入限度額に影響します。ご注意ください。

人材確保と帰属意識が課題

究極の社会保険料節約法は、「従業員を雇用しない」ことです。
加入対象となる常勤の役員さんであれば、非常勤など加入しないで済む方法を選択することも。
(当たり前のことですが、復習も兼ねて。)

既述のように外注先や業務委託として、労働力を提供してもらう方法なら、社会保険の加入はできません。労務提供は、雇用(直接雇用)だけではありませんので、検討する価値があります。

ただし、「指揮・命令」という壁をクリアできなければ、結果として、雇用しか方法は残されていないことになります。

また、「社員・従業員」「雇用・採用」でなくなると、どうしても「帰属意識、帰社意識、ロイヤルティ」が低下します。

報酬・賃金の総額の削減も場合によっては可能でしょうが、人材の確保やモチベーションを考慮すると、単純な切り下げはトラブルに直結します。労働条件の不利益取り扱いには、十分ご注意ください。

いわゆる基本給の額が低い場合は、人材確保の点からも注意したいところです。

お客様の事業・業種で、導入できる労働力・労務提供の制度・仕組みは何かを十分検討されたうえで、取り組むべき問題が社会保険料の負担の問題です。
本来は、業績向上が一番先かも知れません。
いえ、きっとそれが一番です。


※弊社・戦略人事研究所では、違法または法律に抵触するようなアドバイス・コンサルティングは行っておりません。また、労働契約法を軽視・無視することも、同様に行っておりません。


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