高度プロフェッショナル制度の年収制限は下がる?

労働基準法の改正案にあり、新聞・マスメディアで取り上げられることの多いのが「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)、少し前まではホワイトカラーエグゼンプションと言われていた働き方。

高プロについては、制度自体については他の方々が詳しく書いているので、書く必要もないでしょう。また、9月8日に公表された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」については触れていません。が、別の面から書いてみたいと思います。

それは、タイトル通り、高度プロフェッショナル制度の年収制限は、下げられる、即ち拡大するのか? 職種も見直しがされて、拡大するのか?
(年収1075万円→うわさレベルでは、400万円??)

答えは「分かりません」。
ただし、施行規則で年収制限や職種が決まるようなので、省令ですから、国会の議決も要らず。この部分を、労働者側の立場で強く非難する方々も少なくありません。

では、現実問題として、導入が進むのか?
答えは先ほどと同じですが、「おそらく一部の企業は取り入れる」が正解でしょうか。どのような企業なのか、本当に上場企業で法令の要件をクリアできるところ、一部のチャレンジャー・スピリットのある企業だけだと思います。
(チャレンジャー~、決して良い意味で使っていません。)

その理由は、労働基準監督署の調査があるから、です。
(↑ そうではないです。実際に導入するには、色々とハードルが高いからではないでしょうか。)
現状の裁量労働制のうちでも、企画業務型の条件は非常に厳しいのです。この企画業務型も職種などを一部拡大する方向ですが。

では、少し、この企画業務型について知っておきましょう。
「企画業務型裁量労働制」 厚生労働省労働基準局監督課
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/roudou/kikaku/

内容については厚生労働省の記事を確認いただくとして、「労使委員会の決議を、労働基準監督署に届け出る」ことで、企画業務型が有効になります。

はい、この決議を届け出ていただくと、余程のことが無い限り、労働基準監督署の調査が待っています。期間は、1年以内と思ってください。調査の有無と期間1年以内は、私個人の主観です。

専門業務型でさえ、届け出れば、ほぼ1年以内に労働基準監督署の調査が待っています。「ウチは来てないよ」と言う企業様の声も聞きますが、調査がある体で、準備をしておく方が良いのです。

企画業務型は、6か月に1回の報告、決議の有効期間は指導に従えば3年(以内)。報告が出ていなければ調査対象になりやすい、決議を届け出れば、調査の対象。

高プロ(高度プロフェッショナル制度)も同様になるでしょう。
いえ、なる保証はありませんが、ならない保証もありません。

健康確保措置も強化されるので、現実問題として「導入したい→導入できる」企業様は、本当に多くないと思います。

【高プロに対する主観です】
まともな感覚を持つ社会保険労務士なら、高プロも、企画業務型も、おすすめはしないでしょう。企業の側が「導入したい」意向が余程強くなければ、「ハイ、分かりました」と書類を作らないのでは。少し労務管理を知っている中小企業診断士も同じでしょうか。なぜなら、実際に導入し運用するには「面倒」…。労基署の調査対応に追われる羽目に。

労働基準法をはじめとする労働法の知識を持たない、人事コンサルタントや経営コンサルタントなら、どうでしょうか…。

企業内の人事労務のご担当者様であれば、「導入しろ」と言われれば、業務命令ですから、粛々と事務作業・書類作成を進めるしかないのかも…。

「労働基準監督署の調査があること前提で」
外部の誰かに、こう言われて喜んで導入する企業の経営者や人事労務担当者がいるのでしょうか。 この調査という単語を持ち出すと、どうしてもイヤな顔をされることが多いのが実感です。 書類を作成して提出・備え付ければ、制度自体は導入できます。 が、運用・法令順守ができない制度を導入したら、誰の責任になるのやら。人事コンサルや社会保険労務士の責任??

「やれと言われたが、個人同意やら、労使委員会やら、報告やら、ハードルは高いけど」
ハードルは、確かに高いです。

業務の遂行方法等に関し使用者が具体的な指示をしない(企画業務型)のなら、いっそ業務委託に変えますか? 外注では、税理士の先生が消費税問題で反対される場合もありますね。

【高プロよりも】
それは、残業時間の720時間規制、年休の取得問題の方が、インパクトは強い気がします。

だって、年休の保有日数・付与日数をカウントしていない企業様がどれだけあるか。いずれ取得強制化になれば、大変。 で、36協定さえ出していない企業様があるのに…。
(36協定については、未提出の事業場は全て狙われます。予算で、概算要求済みです。取りあえず、当たるか当たらないか。)

年収制限が下がっても、職種が拡大されても、労働基準監督署・労働基準監督官の調査対象に近い場所にあるのは間違いない訳で。そのあたりを、どのように受け止めるのか、でしょう。長時間労働に敏感になっている、このご時世です。CSRの面、コンプライアンスの面から、「気にする」企業様が、安易に導入するとは思えません。企画業務型をすでに導入していて、問題がない企業様であれば、高プロの導入ハードルは高く見えないことでしょうが。

当然ですが、弊社・戦略人事研究所は、お客様の利益を最大になるよう、高度プロフェッショナル制度でも、企画業務型裁量労働制、もっと簡単な専門業務型裁量労働制でも、貴社コンプライアンスに則って、導入支援を行います。


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株式会社 戦略人事研究所

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