「長時間労働を見直すのは無理」は、無理なことなのか

残業上限が法制化され、原則一ヶ月45時間、年間で360時間までになりました。厳密には、まだ実施されていませんが。

いくつかの企業経営者の方から意見をいただきました。
「まあ、決まったことは仕方ないので、それに向けて、桑野さんのアドバイスを受けながら、労働時間の短縮を行うしか考えていない。」
「今までの仕事のやり方を変えないといけないこともあると思う。そういうときには、外部の人間に頼むのが一つの方法だと思う。」

まあ、比較的冷静に労働基準法の改正(働き方改革関連法の成立)を受け止めている企業経営者の方が多い印象です。

ただし、一方では、こんなことも言われています。
「無理。今まででも時間外労働が月に100時間を超えることもあるのに、月45時間は絶対無理。」
「労働基準監督署で働く公務員は、民間企業の実態を知らんのか。(って、監督官もそれぐらい知っていますと何回説明したことやら)」

過去にも書いていますが、
「経営者の宣言」が一番有効です。
そう、「時間外労働の削減、労働時間の短縮に取り掛かれ」です。
労働時間の短縮は言わずとも、時間外労働・休日出勤の削減は急務です。

制度的には、使える労働時間制度を利用する。
例えば、みなし労働時間制であり、裁量労働制。職種が当てはまれば、これほど良い制度はありません。労基署の調査があるので、簡単にはおすすめしませんが。

あとは、経過的には特別条項の適用。
年6回・6カ月の適用ではなく、恒常的な時間外労働があるところが、特別条項を利用・記載しているので、実質的には無理があるでしょうね。

そして、いつも書く「長時間の残業者の分布」。

  • 特定の個人だけの場合
  • 特定の部署、職種だけの場合
  • 全社的な場合

詳細な時間を掛けて行う、行動分析などは不要です。たった、これだけ。

●特定の個人だけの場合は、同じ職種の従業員の残業傾向がどうなのか、確認します。だいたいが、業務量が偏っているケースがほとんどです。要するに、「仕事の属人化」、組織としては一番やってはいけないケースです。
対策は、メイン・サブ担当、マニュアル化・標準化、人材育成…。その特定の個人にも、企業の側にも、非常に嫌がられますが、するんです。

●特定の部署・職種の場合は、その部署の管理職が問題を知っているはずです。「どこが問題なのか、何が問題なのか」は、解決できます。特定の職種、例えばデザイナー、設計技術者の場合。言われるのが、「時間を掛けないと、良いものはできない」→「良いものでないと、お客様・クライアントに提示できない」。時間を掛けても、もとのスキル・テクニックが低ければ、と思いますが。「納得できるまで~」と言われても、納得するのは本来お客様ではないでしょうか。

●全社的に長時間労働の場合は、それは単純。単に、業務量と人材のバランスが取れていないケース。庶務・経理のヒトまで残業時間が多いのは、帰れない状態。

「できない」ではなく、「やらなければ」「やるしかない」と経営者・社長が有効な宣言をしていただくのが一番です。

最後に書いておきます。
労働条件の不利益変更対応を覚悟したうえで、できること。例えば、所定労働時間が週40時間未満の企業であれば、週40時間にする。週休2日制を維持するとしても、祝日のある週は土曜日を休日としない、逆に祝日を休日にしない。

夏季休暇・年末年始休暇を見直す。
そう、週40時間を下回らないように、所定労働時間を設定する。

これらは、年次有給休暇5日以上取得義務化にも有効かと思います。

権限を委譲しての、管理職の創設もある程度意味があります。クリエイティブ系なら、いっそ業務委託への契約内容の変更も考えて良いと思いますが、これには反対の声も多く、顧問税理士さんも反対する場合が結構あります。

実際には、職場の実態・就業規則などの社内規程を見ないと何とも言えません。

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株式会社 戦略人事研究所

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