「年休5日取得義務化」をクリアするテクニック

年次有給休暇の5日(以上)取得義務化の反響は大きく、何度か伝えていますが、弊社・戦略人事研究所にも質問・相談の類いが届いています。

基本的な方針は、「従業員・社員の自主的な年休取得」が最適解です。

それに伴う、職場環境や労働環境の整備、適正人員配置、業務の属人化を防ぐための施策、半日休暇制度など、自主的な年休取得を支援する方法はいくらでもあります。
(弊社でも、コンサルティング&支援を行っています。)

そうは言っても、「罰金一人30万円は辛い」という経営者様・社長様も多いのを実感しています。
「ウチは、社員が30名やから罰金だけで900万や」と言う社長さんって、全く年次有給休暇を取得させていないのか、少し不安に感じてしまいますが。

戦略人事研究所・「年休5日取得義務化」をクリアするテクニック

クリアするテクニック(人事労務面)としては、次のようなことです。

  • 「事業主の年休・時季指定義務」を実行する
    就業規則の年次有給休暇の項目に、規定を追加します。規定自体は、厚生労働省がモデル規定を公開しているほか、各コンサル会社・社会保険労務士事務所などが公表しています。一つ注意したいのは「従業員の意見を尊重して」の部分、努力義務なのでよく考えて規定に盛り込みましょう。
    • 時季指定実行のタイミング
      年休付与後、すぐに実行しましょう。付与後半年経ってからとか残り3か月での時季指定は、管理面で面倒です。←悪意でなく、今後の自主的な年休取得のためにも「自由に使える年休が少なくなる」意識を従業員・社員に持っていただくためです。
      間違っても「付与して12か月目に」時季指定することのないようにしてください。また、勤怠管理システムを導入している場合「◯か月で5日(3日とかも)取得していないとアラートを出す」設定をしますが、余裕を持った設定をするようにお願いします。
  • 年次有給休暇の計画的付与
    管理の面ではおすすめできませんが、統一的な取扱いをすれば良いので、ある意味ラクかも知れません。労働条件の変更について、従業員・社員の合意があれば、現行の労働条件を変更することができますので。
    • 所定休日との置き換え
      例えば、夏季休暇、祝日と置き換えます。就業規則での計画年休の規定確認、労使協定の作成、保管、そして実行です。従業員等との合意が必要な点は注意してください。計画的付与の日数は多い方が良いです。退職時の一括取得問題も併せてクリアできます。「計画年休は5日」なら自主的な年休取得を進める方がマシです。労使協定は、各事業場(本社だけでなく、支社支店工場店舗など)ごとに必要です・
      • 問題点
        残業代単価の基礎額が低下します。制度変更の説明会では、この問題を避けることはできないと思います。
    • 個人毎の計画的付与
      管理の面で、おすすめできません。それであれば、事業主の時季指定を実行した方がラクです。労使協定も不要です。
    • 計画年休の日数を6日以上にした場合
      付与日数によっては、自由に使える日数が5日を下回る場合も出てきますが、必ず5日間の年次有給休暇は従業員・社員が自由に使えるよう確保してください。足りない場合は特別休暇とするのが、分かりやすいと思います。もう一度書きますが、「計画年休5日」であれば、事業主が時季指定する方が管理面でラクです。逆に「計画年休10日以上」でないと、計画的付与を導入する意味がありません。
      法定どおりに付与している場合も、採用後6カ月未満であれば年休が付与されていませんので、同じく特別休暇扱いが良いでしょう。
    • 退職者の扱い
      計画年休を8日と設定した場合。付与日数が20日の場合、単純に20-8=12日が自主的に使える年次有給休暇の日数になりません。建前上は、「退職が決まった時点」での計画的付与の日が決まっているかどうかですが、トラブルを防ぐなら別の方法をとることも良いかも知れません。
  • 特別休暇の見直し
    例えば、慶弔休暇があれば、付与日数や付与条件を見直します。付与条件は、「年次有給休暇の取得日数が5日に満たない場合は、慶弔休暇は申請・取得できない」などとします。労働条件の変更ですので、その点はご注意ください。
  • 時効年休積立制度の導入
    「なぜ年休を使わないのか」→「何かあったときのための少しでも残しておきたい」そういう方が少なくないのはご理解いただけるでしょうか。時効で消滅する年休について積み立て、例えば私傷病や育児・介護の際に使えるようにするのが時効年休積立制度です。就業規則とは別規程化し、ある程度の詳細まで決めておくのが良いでしょう。労働条件の変更ですが、プラスの方向へ変更しますので、「計画年休」「特別休暇見直し」とセットで変更することをおすすめします。
    (弊社では、時効年休積立制度の導入支援を行っています。)
  • クラウド系勤怠管理システムの導入
    ランニングコストは掛かります。年休申請、残業申請、その他のアラートが使えますので、人事労務に関する人手・時間は削減できます。導入の際は、人件費の削減効果とセットで考えてください。
    (弊所では、クラウド系勤怠管理システムの設定支援を行っています。設定が適法・規則に沿ったものでない場合、逆に手間や時間を取られることになります。)
  • 年休取得は管理職の仕事
    今後は、「年次有給休暇を部下に取得させること」が管理職の仕事の一つとして加わります。取得日数によっては、人事評価への反映、賞与額への反映も考えられます。時間外労働の管理とともに、管理職の重要性は高まります。働き方改革は「管理職のお仕事を見直す」絶好の機会です。

従業員・社員の年休取得が5日に満たない場合、すぐに罰金の命令が下る訳ではありません。裁判で確定判決が出る必要があります。その前に刑事罰ですから検察庁に送検されます。その前には、労働基準監督署・労働基準監督官の調査・立件があります。労働基準監督官は、「労働基準法の警察官」ですから。行政罰・過料ではありません、立派な刑事罰です。そうなると弁護士さん(弁護士費用)も必要です。

「従業員・社員の自主的な年休取得」が最適解というのを、再度書いておきます。

ご不安な場合は、弊社・戦略人事研究所へご相談ください。
「罰金一人30万円」と考えると、弊社の料金は安いものです。

就業規則の作成・変更や労痔協定の作成は、関連の社会保険労務士事務所で対応します。)


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