無期転換制度、本当はいつから始まる?

「平成30年4月から、一番早いケースで無期転換申込権が発生します」
「どちらの企業も、無期転換制度の対応は、平成29年度中に」
などと、マスコミの報道、あるいはセミナーを受講すると、このような文章、話しに接します。

さて、本当は?
結論➜契約期間の設定は、各社違うはずでしょ。だったら、全てが平成30年4月から無期転換申込権が発生するわけでは無い。絶対に確認が必要。
(3年契約や2年契約を持ち出す気はありません。1年以内の契約で!)

まずは、ベースの条文。

労働契約法
(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)
第十八条 同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする

逆に見にくいですね。
それぞれ、意味はあります。

ある企業様の実例から。
●初回の契約:必ず、期末までになるように設定。それ以後は、1年の有期労働契約。
●期末:その法人の期末は、2月末。期首が3月1日と言うこと。

  • 平成25年4月前からの場合
    • n回目:平成24年3月1日~平成25年2月末
    • n+1回目:平成25年3月1日~平成26年2月末
      初日が平成25年4月前なので、ノーカウント
    • n+2回目:平成26年3月1日~平成27年2月末
      平成25年4月1日以後最初の契約期間、平成26年3月1日が初日=5年後の応当日は平成31年3月1日
    • n+3回目:平成27年3月1日~平成28年2月末
    • n+4回目:平成28年3月1日~平成29年2月末
    • n+5回目:平成29年3月1日~平成30年2月末
    • n+6回目:平成30年3月1日~平成31年2月末
    • n+7回目:平成31年3月1日~平成32年2月末

この場合、平成26年3月1日が通算契約期間のカウント初日になるので、5年後は平成31年2月末日、5年超(5年と1日)は3月1日。この平成31年3月1日が含まれる契約期間は、「n+7回目」の契約期間。つまり、平成31年3月1日から無期転換申込権を行使できることに。1年契約なので、教科書通り=厚生労働省のパンフレットの案内通りに読めば良いことに。

  • 平成25年4月以後に初回の契約がある場合
    平成25年10月に雇い入れたとしましょう
    • 1回目:平成25年10月1日~平成26年2月末
      平成25年4月以後に初回なので、カウント初日は平成25年10月1日。初回は期末までの契約
    • 2回目:平成26年3月1日~平成27年2月末
    • 3回目:平成27年3月1日~平成28年2月末
    • 4回目:平成28年3月1日~平成29年2月末
    • 5回目:平成29年3月1日~平成30年2月末
    • 6回目:平成30年3月1日~平成31年2月末
    • 7回目:平成31年3月1日~平成32年2月末

5年超(5年と1日、話し言葉では丸5年経った日とも)の日は、平成30年10月1日。平成30年10月1日を含む契約期間は、「6回目」です。平成30年3月1日から、無期転換申込権を行使できることに。

アレッ、ですよね。
平成25年4月より前から有期契約の社員として働いていた方が、無期転換申込権を行使できるようになるのが、平成31年になってからなのに、平成25年10月に採用した方は、平成30年3月から。この企業様の場合は、2月末期末ですが、6末とか9末だともっと早くに5年超状態もありえます。

有期契約の社員さんが多い企業では、契約更新の時期を揃えるために、「初回の契約期間は、法人の事業年度期末まで」とする有期労働契約をとることも少なくありません。実務を行っていれば、誰でも分かることです。

全ての企業の期末が3月末日とは限っていません。
ですので、「初回の契約期間は、法人の事業年度期末まで」の場合は、注意が必要です。月末期末なら、4月から2月までの期末のところは改めてチェックを。

決算月別法人数でグーグル検索をすると、事業年度の決算月は、3月が2割、9月12月6月の順でほぼ各月1割だそうです。

気を付けた方が良いですね。
「もう(すぐ)、無期転換申込権、行使できる状態かも。」

すき間なく1年の契約更新を行っている場合は、口語で「5年経った日」が含まれている労働契約期間の初日になれば、無期転換申込権を行使できる状態になります。初回の契約期間が、1年未満の場合は、本当にご注意ください。5年を超えた従業員が申し出ることができるのではなく、「5年と1日」が含まれている契約期間の初日から申し出できます。期間契約と期間契約の間にすき間があっても、クーリングに該当しない限りは、同じです。


※2末決算の法人は少ないですね。まあ、企業名までは分からないでしょうから。


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